「北大短歌」第三号

北海道大学短歌会発行の機関誌「北大短歌」第三号に、第二号掲載歌の歌評「「北大短歌」第二号評」を寄稿しました。お招きいただき、北大短歌の皆様にはお礼を申し上げます。

第三号は特集「短歌と性愛」。ほくたんメンバーの座談会や、短歌と性愛表現について論じた、山田航さん、三上春海さん、内藤瑳紀さんの評論、顧問の阿部嘉昭さんの大辻隆弘論など、盛りだくさんです。参加者それぞれの短歌作品も、実に活き活きとしていて、大きな収穫でしょう。ゲストの穂村弘さんへのメールインタビューや、北山あさひさんの15首など、一冊の完成度として高いものとなっています。数に限りがあるでしょうから、お早めのご購読を。

通販希望者はこちらに詳細が → http://hokutan12.exblog.jp/24121736/


なお、黒瀬の前号評において、手違いで、滝貴愛さんの歌に言及できませんでした。従いまして、以下を追記します。


 瞼閉じ広がる視界さ迷えば一本の木のごとくたちたり
 紙袋を無駄と知りつつ被るのは寂しきことの寂しさのため
                      滝貴愛「じゃがいも」
 寂寥感を詠む歌人は数多いが、滝の一連では寂寥感や日々の苛立ちが、日々の生活そのものと結びついて詠われるようだ。一首目は時田則雄の「獣医師のおまへと語る北方論樹はいつぽんでなければならぬ」と好対照で、時田の樹が自尊と自立の証なのに対して、滝の木は明日が見えずに茫然自失する若者の心である。闇の視界がまるで大地のように感じられるのは、「木」という素材の選び方もあるだろう。二首目も独特で、寂しさを寂しさとして抱き留めるためにナンセンスに走る、若者特有の心がある。ただ、「無駄と知りつつ」は歌には余計な言葉だろう。

「八雁」2015年7月号

「八雁(やかり)」(編集発行・阿木津英)2015年7月号に、佐竹游歌集『草笛』の書評「命と命の関係」を寄稿しました。僕の他には島田幸典さんと女性学研究者の金井淑子さんが寄稿しています。

 円錐花序つけたる葡萄見上ぐればはらわたの底あかるむごとし
 食卓に皿ならべゆく朝の日をひとりびとりに頒たむがため
 どこまでも砂浜なればくちづけをかはせずふたり海を見つめる
 幹に枝喰ひ入るごとく抱きあひ〈それより先〉をせずして別る
 皮膚に皮膚重ぬるときにつぶれたる空気小さき声をあげたり
 嫌悪感あらはにからだ捩(よ)ぢりたり受胎告知をなされてマリア
 レズビアンは迫害の歴史さへ持たず否持たされず歴史より消ゆ
 午後三時猫のあくびをする君に猫の気分で肛門を舐む
 死へ死へと駆け出しさうになるわれをリノリウムの床に捩ぢ伏せてゐる
 われには君 君にはわれの配されて互みに神の手駒なるらむ
              佐竹游『草笛』(現代短歌社)より

上記のような歌について書きました。『草笛』はとても優れた歌集ですので、機会があればぜひお読みいただきたく思います。

こちらから注文できます。→ http://www.gendaitankasha.com/booksonsale.php?page=1#865340655

現代短歌文庫123『有沢螢歌集』(砂子屋書房)

砂子屋書房さんから、現代短歌文庫123『有沢螢歌集』が刊行されました。第三歌集『ありすの杜で』が完本収録、第一歌集『致死量の芥子』、第二歌集『朱を奪ふ』が抄録されています。その他にエッセイ、歌論など。

黒瀬による文章「変化者としての巡礼」(『朱を奪ふ』栞文)が再録されています。「白の会」の歌友である有沢さんの歌業を、ぜひお読みいただければ幸いです。

砂子屋書房のサイト → http://sunagoya.com/ (まだショップ登録されてないので、メールでお問い合わせください)

以前に書いた記事 → 「有沢螢歌集『ありすの杜へ』を読む会に寄せて

「うた新聞」2015年7月号

「うた新聞」2015年7月号(いりの舎)に、短歌「犬儒派」5首を寄稿しました。お読みいただければ幸いです。

巻頭評論は広阪早苗さんの「世代をつなぐ読みの交流を」。小池光・服部真里子を発端とした「水仙と盗聴」論争? がここでも触れられています。どうぞご購読を!

いりの舎さんの「うた新聞」のサイト → http://irinosha.com/utashinbun.html

「現代短歌」7月号 特集「秘蔵の写真1」

現在発売中の「現代短歌」7月号に、短歌「瓦礫と写真」7首を寄稿しました。お隣ページは小島なおさんです。

本号は、いろんな歌人にまつわる秘蔵の写真が一挙公開されていて、とても面白いです。ご購読をお勧めします。
http://gendaitankasha.com/magazine.php?page=3

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第2回福岡合同歌会のお知らせ

福岡で活動している福岡歌会(仮)と「未来」福岡歌会とここのつ歌会の合同歌会を開催します。
福岡近郊の短歌好きの方、ぜひ遊びに来てください!

日時:2015年8月2日(日)、午後1時〜5時
会場:あいれふ(福岡市健康づくりサポートセンター)研修室A
     地下鉄「赤坂」駅で下車し、3番出口より徒歩約4分
     http://www.kenkou-support.jp/access/
会費:200〜300円程度

参加希望者は7月31日までに、こちらのフォームから自由詠1首を黒瀬までご提出ください。
歌会の後は懇親会も設ける予定です。お店など決まり次第、告知します。

美学文芸誌『エステティーク』vol.2

美学文芸誌『エステティーク』vol.2(日本美学研究所)が発売されています。特集は「狂」。

――美とは何か。永遠不変のテーマを問い続ける文芸誌。「美の標本箱」をコンセプトに、美を多角的に捕え、解剖し、その本質に迫ります。
第2号の特集は「狂」。各分野で活躍する総勢18名の識者によって縦横無尽に「狂」が語られました。
フランス語で美学を意味する「エステティーク(ESTHÉTIQUE)」。美を愛し、美を求め、美に狂った全ての人へ。
http://bigakukenkyujo.jp/blog-entry-128.html

黒瀬はエッセイ「狂、を思いつつ綴る断章」を寄稿しました。楠誓英さんと斎藤茂吉の歌について書きました。ご購読いただければ幸いです。

通販限定の「香りつき」を購読希望の方はこちらへ http://www.esthetique.pw/

取扱書店一覧はこちらへ http://bigakukenkyujo.jp/blog-entry-113.html

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美学文芸誌『エステティーク』vol.2 目次
・船越保孝 (ファッションデザイナー) 『Fashion Crack‐亀裂としての服飾』巻頭インタビュー
・津原泰水 (作家) 『病の夢の病の』
・藤田博史 (精神分析医) 『美と狂気‐ホログラフィック精神分析の視座』
・大岡淳 (演出家・劇作家・批評家) 『佯狂という狂気‐シェイクスピア「ハムレット」についてのノート』
・中所宜夫 (能楽師) 『能の「狂」』
・田中雅一 (文化人類学者) 『からだを美しく狂わせる方法‐カーヴァディの身体加工について』
・鵺神 蓮 (緊縛師) 『狂美の緊縛術』
・三浦和広 (美学研究者) 『芸術と猥褻‐狂神ディオニュソスの呼び声』
・松岡 友 (美術作家・霊媒師) 『間と魔‐トランスの狂気』
・黒瀬珂瀾 (歌人) 『狂、を思いつつ綴る断章』
・藤田つぐみ (画家) 『植木鉢に挿された腕‐キャンバスを超えた暴力と幻想』
・岩渕竜子 (漫画家) 『大神』
・華藤えれな (ボーイズラブ作家) 『焔の雪‐あるマタドールへの哀悼』
・武田宙也 (美学研究者) 『非人間的なもの‐フーコーによる狂気と美』
・辻 大介 (調香師) 『狂喜と絶望の調香世界』
・磐樹炙弦 (魔術師) 『狂明‐拡張神経系の夢、あるいは現代魔術のオントロジー』
・成瀬信彦 (舞踏家) 『和を成さば乱』
・樋口りの (第一期最優秀新人作品) 『ししるいるい』