春野りりん歌集『ここからが空』刊行のお知らせ

「短歌人」所属の春野りりんさんの第一歌集『ここからが空』(本阿弥書店)が刊行されました。

黒瀬は栞文「行き交う時間の歌」を寄稿しています。林望さん、三井ゆきさんとご一緒しています。

 ガウディの仰ぎし空よ骨盤に背骨つみあげわれをこしらふ
 ムスカリの新芽のひかり仙骨を大地にますぐ保ちあゆまむ
 子を抱きて夕映えの富士指させばみどりごはわが指先を見る
 豆ごはんを碗によそへり膨れゆく宇宙のゆくすゑなど案じつつ
 幼子と白きみぎはに降り立てば沖へ沖へと子は行きたがる

さまざまな命の姿と、それぞれの時間感覚が不思議と入り交じる、魅力的な一冊です。ご購読をお勧めします。

ご希望の方は本阿弥書店にご注文ください。→ http://homepage3.nifty.com/honamisyoten/tyumon.htm

角川「短歌」2015年8月号

角川「短歌」2015年8月号が発売されました。特集は「没後五年 河野裕子の魅力 全歌集解説」。まさに保存版大特集です。黒瀬は第八歌集『家』についての解説文「暗がりの〈家〉の命」を寄稿しました。お読みいただければ幸いです。

本号はさらに特別企画「戦争の肉声」、永井祐による岩田正インタビューという貴重な記事も収録。ぜひともご購読をお勧めします。

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「現代短歌」2015年8月号

現在発売中の「現代短歌」2015年8月号(現代短歌社)の連載企画「九州の歌人たち」の第24回「森園天涙」を担当しました。

森園天涙30首選と略歴、そして天涙の次男である森園俊氏へのインタビューが掲載されています。

大変でしたが面白く、有益な記事になったと思います。お読みいただければ幸いです。

現代短歌社のサイトは → http://gendaitankasha.com/magazine.php?page=3

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「北大短歌」第三号

北海道大学短歌会発行の機関誌「北大短歌」第三号に、第二号掲載歌の歌評「「北大短歌」第二号評」を寄稿しました。お招きいただき、北大短歌の皆様にはお礼を申し上げます。

第三号は特集「短歌と性愛」。ほくたんメンバーの座談会や、短歌と性愛表現について論じた、山田航さん、三上春海さん、内藤瑳紀さんの評論、顧問の阿部嘉昭さんの大辻隆弘論など、盛りだくさんです。参加者それぞれの短歌作品も、実に活き活きとしていて、大きな収穫でしょう。ゲストの穂村弘さんへのメールインタビューや、北山あさひさんの15首など、一冊の完成度として高いものとなっています。数に限りがあるでしょうから、お早めのご購読を。

通販希望者はこちらに詳細が → http://hokutan12.exblog.jp/24121736/


なお、黒瀬の前号評において、手違いで、滝貴愛さんの歌に言及できませんでした。従いまして、以下を追記します。


 瞼閉じ広がる視界さ迷えば一本の木のごとくたちたり
 紙袋を無駄と知りつつ被るのは寂しきことの寂しさのため
                      滝貴愛「じゃがいも」
 寂寥感を詠む歌人は数多いが、滝の一連では寂寥感や日々の苛立ちが、日々の生活そのものと結びついて詠われるようだ。一首目は時田則雄の「獣医師のおまへと語る北方論樹はいつぽんでなければならぬ」と好対照で、時田の樹が自尊と自立の証なのに対して、滝の木は明日が見えずに茫然自失する若者の心である。闇の視界がまるで大地のように感じられるのは、「木」という素材の選び方もあるだろう。二首目も独特で、寂しさを寂しさとして抱き留めるためにナンセンスに走る、若者特有の心がある。ただ、「無駄と知りつつ」は歌には余計な言葉だろう。

「八雁」2015年7月号

「八雁(やかり)」(編集発行・阿木津英)2015年7月号に、佐竹游歌集『草笛』の書評「命と命の関係」を寄稿しました。僕の他には島田幸典さんと女性学研究者の金井淑子さんが寄稿しています。

 円錐花序つけたる葡萄見上ぐればはらわたの底あかるむごとし
 食卓に皿ならべゆく朝の日をひとりびとりに頒たむがため
 どこまでも砂浜なればくちづけをかはせずふたり海を見つめる
 幹に枝喰ひ入るごとく抱きあひ〈それより先〉をせずして別る
 皮膚に皮膚重ぬるときにつぶれたる空気小さき声をあげたり
 嫌悪感あらはにからだ捩(よ)ぢりたり受胎告知をなされてマリア
 レズビアンは迫害の歴史さへ持たず否持たされず歴史より消ゆ
 午後三時猫のあくびをする君に猫の気分で肛門を舐む
 死へ死へと駆け出しさうになるわれをリノリウムの床に捩ぢ伏せてゐる
 われには君 君にはわれの配されて互みに神の手駒なるらむ
              佐竹游『草笛』(現代短歌社)より

上記のような歌について書きました。『草笛』はとても優れた歌集ですので、機会があればぜひお読みいただきたく思います。

こちらから注文できます。→ http://www.gendaitankasha.com/booksonsale.php?page=1#865340655

現代短歌文庫123『有沢螢歌集』(砂子屋書房)

砂子屋書房さんから、現代短歌文庫123『有沢螢歌集』が刊行されました。第三歌集『ありすの杜で』が完本収録、第一歌集『致死量の芥子』、第二歌集『朱を奪ふ』が抄録されています。その他にエッセイ、歌論など。

黒瀬による文章「変化者としての巡礼」(『朱を奪ふ』栞文)が再録されています。「白の会」の歌友である有沢さんの歌業を、ぜひお読みいただければ幸いです。

砂子屋書房のサイト → http://sunagoya.com/ (まだショップ登録されてないので、メールでお問い合わせください)

以前に書いた記事 → 「有沢螢歌集『ありすの杜へ』を読む会に寄せて

「うた新聞」2015年7月号

「うた新聞」2015年7月号(いりの舎)に、短歌「犬儒派」5首を寄稿しました。お読みいただければ幸いです。

巻頭評論は広阪早苗さんの「世代をつなぐ読みの交流を」。小池光・服部真里子を発端とした「水仙と盗聴」論争? がここでも触れられています。どうぞご購読を!

いりの舎さんの「うた新聞」のサイト → http://irinosha.com/utashinbun.html